先日、改正建築士法で義務付けられた『一級建築士定期講習』の終了書が送付されてきました。これは平成20年11月より施行されている建築士法等の一部を改正する法律によるものです。
この『改正建築士法』とは、耐震強度偽装事件(姉歯事件)の対策のひとつとして改正された法律です。主な改正点は、建築士試験の見直し、定期講習制度、管理建築士の要件強化、重要事項説明の義務づけなどがあります。
『一級建築士定期講習』は、建築士事務所に所属する建築士に対して、3年毎の定期講習の受講が義務づけられています。講習はテキストに沿って行われ、最後に終了考査(試験)に合格すれば、後日終了書が送付されます。1日を費やし12000円支払った講習ですが、正直言って何の役にも立たない酷い講習・考査でした。義務化された1級建築士の対象者は、これまで約56000名が受講しています。(財)建築技術教育普及センターという、国土交通省の外郭団体の為の義務化と思われても仕方ない制度です。また、講習の対象は建築士事務所に所属する建築士のみであり、身内とも言える役人は対象外となっています。どこまで役人を特権階級としたいのかとの疑問もあります。更に、管理建築士としての講習も別途義務付けられています。
そもそも耐震強度偽装事件は、姉歯元1級建築士の人間性の問題なのに、国は建築士の資質や能力・技術の問題と捉えた事が、この様な全く理解に苦しむ法律改正につながり、更には天下り先の収益確保まで図ったのではないかと考えています。
当時、衆議院・参議院とも全会一致で可決されました。建築がわかる国会議員は1人もいないのか、建築などわかなくても、この対策で偽装がなぜ無くなるのか、落胆した事を思い出しました。
義務化なので、定期講習を受講し無事終了考査に合格したことは良かったのですが、法律の成立や改正(改悪)に、私達はもっと敏感にならなくてはと改めて感じました。そして、問題の本質が何かをしっかりと見極め、要因分析と対策、成果の検証の必要性を改めて考えさせられました。